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偏光板1枚で遊んでみましょう.

まず,偏光板を通して周囲を眺めてみます.偏光板はその透過軸方向の電場成分しか通しませんので,振動方向が偏っていない光(太陽光やLED光)は半分遮られて暗くなります.目の前で偏光板を90度右左に回転させて観察すると単に暗くなるだけではない見え方があることに気付くはずです.
机や床の反射光はどうでしょうか.偏光板の透過軸が水平のとき明るく見え,鉛直のとき暗く見えるでしょう.反射光はその反射面に垂直な面内電場の成分が減少します.水面やガラス面の反射光では,反射光の方向と屈折して水やガラス内に侵入する光の方向が垂直になる角度(Brewster’s angle)では反射面に垂直な面内電場の振動成分は0になります.これは,屈折光の面に垂直な面内電場の振動方向が反射光の方向と一致するため振動成分がなくなるためです.反射光は反射面に平行に強く偏光することになります.同じような現象は次の青空の偏光でも見られます.

もう一つ,1枚で確認できる興味深い現象を紹介します.朝方か夕刻が分かり易いのですが,天気の良い日に青空が広がった南の空を偏光板で眺めてみてください.偏光板の透過軸を鉛直にすると明るく,水平にすると暗く見えるはずです.空が青いのは空気分子が太陽光を散乱するためですが,散乱の機構は,光の電場で揺すられた空気分子が光を放つためです(Rayleigh scattering).南の空の空気は朝方なら左から,夕刻なら右から光が照射されているので,私たちから見ると前後方向と上下方向にしか揺すられていないので散乱される光の電場もその方向にしか振動できないのです.したがって水平方向(正確には太陽光の進行方向)の電場振動成分がないため,南の空は鉛直方向に強く偏光することになります.

弦の半月が見える南の空を偏光板の透過軸を水平にして撮った写真と鉛直にして撮った写真を並べて示します.月の欠け具合から右から光が照射されていることが明らかです.

実は偏光板を使わずとも空の偏光は肉眼でも確認できます.Haidingerのブラシと呼ばれる内視現象のひとつです.